<東京都における食と農の”ポテンシャル”>
12兆円。
突然ですがみなさん、こちらは何の数字かご存じでしょうか?
こちらは、東京都が年間に消費する食料に関する金額です。
そして、18年。
これはミシュランガイドの星付き掲載店舗数において、東京都が世界1位を取り続けている年数です。
星付き掲載店数18年連続1位の東京に新たな三つ星が誕生!「ミシュランガイド東京2025」セレクション発表 | 日本ミシュランタイヤ株式会社のプレスリリース
東京都は全国で消費される食料の約17%を消費しています。また飲食店に関してもミシュランガイドが示す通り、世界が認めた美食の都市と言えます。特に食料消費の割合において、全国の約1/4が東京で消費されているという事実は、驚きではないでしょうか。
もう1つ。ミシュランのグリーンスターという称号があり、その獲得数も東京都は2023年時点で世界一となっています。ミシュラングリーンスターとは持続可能な食文化に対し、積極的に活動しているレストランに功績を評価し、また奨励するマークです。
大量消費地、美食の都市、そして持続的な食文化への先進的な取り組み。このようなポテンシャルをそろえる東京都は、まさに食の中心地であり、食文化に対して大きな影響力を持つ都市なのです。
<大消費地域で考える「サステナブルガストロノミー」という視点>
私たちが住む日本において、東京都が食文化でとても重要な地域だということは理解していただけたと思います。
巨大な消費と経済の流れを生み出し、時代の流れとスピードを持つ、東京都。
その東京で発生する食料の大消費はこれまで「もったいない」や「フードロス」など、消費するだけではなく、その方法や廃棄の必要性などの観点から様々な取り組みがされてきました。特にフードロスの視点は、今では生活者の身近な言葉となっています。近年では、2015年に制定されたSDGsの考えに基づき発信される「サステナブルガストロノミー」という言葉があり、世界でトレンドとなりつつあります。この言葉を2つに分解すると「サステナブル=持続可能」と「ガストロノミー=美食学・美食述」と分けることができ、後者のガストロノミーは「食と文化との関係を考察し、味わう」という意味に言い換えることも出来ます。つまり「サステナブルガストロノミー」とは簡単に言うと「持続可能な食文化」ということになります。私たちが生きる上で欠かせない食において、食材の生産やその方法、そして私たちの食卓に届くまでのプロセス、そして消費、廃棄に至るまで、持続可能な視点を大切にしていこうとする考え方です。
この「サステナブルガストロノミー」という考え方は、大消費地域である東京都においてとても重要であると私たちは考えています。消費し続けるだけでは、将来的に今の食文化を維持することは難しくなってきています。
「自然資源を無駄にせずに環境や健康に害を与えることなく、長期にわたって継続できる食文化を考える」また、「食材がどこから来たのか、どのように栽培されたのか、そしてそれがどのように市場に届き、最終的に私たちの食卓に届くのか、それを考える」。
私たちひとりひとりが持続可能な食について意識し、今の食文化を継続するためには何ができるのか、何が必要なのか、立ち止まって考える時代にきています。
<AgVenture Labと「サステナブルガストロノミー」>
さて、私たちはサステナブルガストロノミーの考えが、AgVenture Labの目指す方向と親和性が高いと感じています。AgVenture Labのコンセプトは、「次世代に残る農業を育て、地域のくらしに寄り添い、場所や人をつなぐ」です。この考えに立って、「食・農・くらし」にかかわる社会課題の解決を目指すスタートアップを数多く支援してきました。JAアクセラレータープログラムを代表とする各種プログラムでスタートアップに関わり、様々な社会課題を解決する現場にも触れてきました。その中でサステナブルガストロノミーに取り組むスタートアップも少なくありません。
例えば、規格外や価格調整などさまざまな理由で廃棄される農畜産物を加工し、新たな付加価値を付けて流通させなど、農畜産物を余すことなくを使い切るフードロス領域のスタートアップは、数多くJAアクセラレータープログラムに参加しています。
未利用食品の粉末化技術を活用し、アップサイクルブランド「Vegemin」を展開する株式会社グリーンエース(greenase)をはじめ、過熱水蒸気技術を活用して「かくれフードロス」の削減に取り組む、ASTRA FOOD PLAN株式会社(ASTRA FOOD PLAN株式会社)・流通の前段階で廃棄されてしまう魚を活用したミールパック展開する株式会社ベンナーズ(ベンナーズ)・さまざまな理由により販売できない農産物を冷凍し、新たな付加価値を持って販売するデイブレイク株式会社(デイブレイク株式会社 | 食品流通の世明けを目指す。)など、廃棄を減らすことで将来的に食の豊かさや食文化の維持に繋がると考えています。
他にも、日本各地に1200あると言われる味噌蔵と連携し、毎月異なる味噌を使った完全栄養食みそ汁「MISOVATION」の開発・販売を行う株式会社MISOVATION(COMPANY – MISOVATION)、食・農分野において、商品単位での環境負荷を計測・見える化するシステム「Myエコものさし」を開発・運営をするクオンクロップ株式会社(cuoncrop)、脱炭素農業の取り組みによって削減された温室効果ガスを「カーボンクレジット」として認証し、販売まで一気通貫でサポートする株式会社フェイガー(株式会社フェイガー)など食文化の保全や、食・農を起点とした環境負荷の改善などを提言するサービスを展開するスタートアップもJAアクセラレータープログラムで採択されています。
<東京都とともに、実現に向けてアクセルを踏みます>
「食」や「農」を起点としたスタートアップと共創しサステナブルガストロノミーへ取り組むことが、AgVenture Labの目指す未来の一部でもあります。
東京都のスタートアップ支援が盛んなのはご存知でしょうか。これまでも東京都が展開する「多様な主体によるスタートアップ支援展開事業『TOKYO SUTEAM』」にAgVenture Labが協定事業者として採択され、現在も取り組んでいる実績があります。今回、新しく東京都が展開する「TIB CATAPULT」という事業でAgVenture Labが代表事業者として採択され、10月から本格始動しています。「TIB CATAPULT」とは、スタートアップと事業会社などの連携を支援し、グローバルイノベーションに挑戦するクラスター(集団)を育てることを目的としており、6つある領域のうちフード・アグリの領域でAgVenture Labが採択されました。この取り組みで私たちは、事業会社とスタートアップの協働を主導し、「東京都のサステナブルガストロノミー」の実現に向けて取り組ん行きたいと考えています。
毎日食べている、その食事。
100年後も守っていけるように。
「食」と「農」に通じる私たちがサステナブルガストロノミーの実現に向けて東京都と二人三脚で、大きく動き出します。
次回は、東京都が主導する「TIB CATAPULT」について私たちの取り組みを詳しくご説明します。それでは、次のnoteでお会いしましょう!
※この記事はAgVenture Labのnoteで公開した内容です。
noteはこちら▼
https://note.com/agventurelab